Wednesday 29 July 2015

Joseph Cornell/Wanderlust@Royal Academy of Art



箱アートの大家、ジョセフ・コーネル展が7月4日から始まったので、観に行って来ました。

私、箱アート大好きなんですが、コーネルの作品ってイギリスではコレクションを持っている美術館が少ないのか、まとめて本物を目にする機会がこれまで一度も無かった。テート・ギャラリーが二点ほど持っているけど、隅に押しやられた様な、哀しくなっちゃうような地味な展示の仕方だし。イギリスでは彼の作品はあんまりウケなかったんだろうな、という印象。

"Wanderlust" と銘打たれたこのエグシビション、コーネルのヨーロッパ放浪への憧れ、みたいな心情を表現したものらしい(wanderlustとは、放浪への渇望、漂泊の思い、旅心といった意味)。私はコーネルの作品好きだけど、旅に憧れを抱いていたなんて事は知らなかった、どころか、アーティストとしての彼の人となりも殆んど知らない。

コーネルは、旅への憧れはあったみたいですが、69年の生涯、海外へ出た事は無く、アメリカ国内でも、自分の生まれたニューヨークを離れた事は殆んど無かったそうです。実際に何処かに行くよりも、自分の想像の中で旅する事を好んだらしい。ロマンティストですなぁ。

父親を早くに亡くし、自分が大黒柱となって、布地のセールスマンをしながら母と疾患を抱えた兄を支えていたコーネル、仕事のお昼休みに美術館や本屋に通い、本や様々な小物や紙モノを集め、それが後々の作品の土台を築く事になっていきます。

孤高の人って事になっているけど、他のアーティストとの交流はそれなりにあったらしい。ダンサーやロマンティック・バレエからインスピレーションを得ていたという時期もあったし、実はミーハーな部分も持っていたのかもよー、... なんて。いや、バレリーナに憧れる気持ちは、私もよ〜く分かるよ。




私が彼の作品から受ける印象は、旅への憧憬と言うよりは、言葉にならない、言葉になる前の、潜在意識の海に混沌と存在する何かを箱に詰めてあるみたいだなぁ。という感じ。





彼の作品を見ていると、何かこう、意味が有りそうで無さそうな、まとまったストーリーが有りそうで無さそうな、繋がりそうな糸が途中で切れてるような、漠然とした不思議な感覚に見舞われる。そういうのがとても魅力的だなと思う。色々と蒐集したオブジェを、一見ランダムに箱に詰めてあるみたいだけど、そこには何かのバランスがちゃんとある。だから美しく見えるのだろうと思う。私には真似出来ないなぁ。




今回のこのエグジビション、箱の作品ばかりではなく、彼が知人に撮らせた動画作品や、秀作っぽい箱に入った小物など、幅広い作品群を集めて展示してある。箱しか作って無いかと思っていたら、あの時代で既に動画も撮っていたんだー。意外な一面を顧みた感じです。コーネル、イギリスではアーティストとしてあんまり高く評価されていない印象を受けるけど、いち早く真新しい技術を使って何かしてみたいと思うのって、やっぱりアーティストだよねー、と思う。コーネルの作品が、これだけ一堂に揃うことはもう無いだろうから、もう一回くらい見に行っても良いな。


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