Thursday 30 October 2014

ティエリーと行くドライブ、最終編


海を見たいというティエリーに従って、Saint Suliac を後にした私達。ランス河の河口部にある中世の街、サンマロあたりで海を見て、ついでに軽く何か食べて引き返すのが妥当かな、と思っていたところ、 「ランス河にかかるバラージを渡りたい」とのたまうティエリー氏。因みにバラージとは、ダムの上が道路になっていて、橋として機能している建築物であるらしい。高速からバラージへの分岐点への車線変更が間に合わず入りそこなって、一度途中まで引き返し、再びトライするティエリー氏。…私だったら、ギリギリでも無理やり車線変更するけどな…。そういうのは、法律違反なのだそうだ。パリでフランス語を教えるのが本職のティエリー氏、教師らしく、妙なところで妙にマジメなのだった。ぷっ。


バラージを渡りきったところに小さな駐車場があって、景色を眺められるようになっている。そこで一旦降りて撮った写真が上の二枚。この辺りで私のカメラ、焦点がうまく合わなくなってしまった。このところ調子悪いな、とは思っていたけど、とうとうイカレてしまった模様。なのでこの先の写真は無いのです。iPadで撮るには、少々暗くなってきていたので。因みにカメラは、本体自体に傷みはなく、レンズが壊れたのでした。

さて、車に戻った私達。海も見たし、バラージも渡ったし、そろそろ引き返すのかな、と思っていたらティエリー氏、次はディナールという街を見に行こうと言う。ランス河の河口にあってすぐだから、近いから、ということで。そんじゃまー、好きにしなせい。私達、車に乗ってるだけだし。ディナールと言えばペーターおじさんがこき下ろしていた街だけど、行ってみたら小綺麗で小洒落た街でした。悪くはなかった。ペーターオヂの好みが異常に偏っているだけだった。

本来、この街でちょっと散歩して、ご飯食べて帰って来られれば一番良かったんだけど、ディナール、街自体がそれほど大きくは無く、道は坂道が多くて狭く、その上混んでいて駐車スペースが全く無い。なので車を降りる事はあきらめる。

「それならここから、ほんの少し海岸を行った所に、昔アーティストで賑わったサン・ブリアックという街があるから、そこに行こう!」と提案するティエリー氏。アーティストがいたのなら、さぞかし洒落た街なのだろう、きっと軽食を食べられる雰囲気の良いカフェもあるに違いない、と勝手に妄想を膨らませ興味を抱き、「すぐ近く」というティエリーの言葉を素直に信じて「それじゃ、そこでご飯食べて帰る事にしよう」ということになる。

しかし、ティエリーの「すぐ近く」と私達の「すぐ近く」には、かなりの開きがある事が判明。夕刻押し迫り腹を空かせた私達にとって「すぐ近く」 とは、車で5分、せいぜい10分くらいのつもりだったんだけど、たっぷり20分は車を走らせてようやくサン・ブリアックに到着。

海辺に駐車スペースを見つけて停め、車から降りたティエリー氏、「先にご飯食べたい? それともタウン・センターを見る?」と聞いてきた。まぁ、タウン・センターならレストランとか当然あるだろうし、他のお店も今行けば少しは開いているかも知れないから、じゃあそっちに行こうかということに。それで先に立って歩き出したティエリー氏について、私達もてくてく歩く。てくてく。てくてくてく。てくてくてくてく。…あのー、ティエリーさん。なんか私達、人里から遠ざかっているような気がするんですが。

「この辺のはずなんだがなぁ」と言いながら、道行く人に道を尋ねたりして先導を続けるティエリーさん。人しか通れない細い道を歩いて行き着いたのは…古い教会だった…。ヤ・ラ・レ・タ・ー。ティエリーの真髄発揮。教会が街の中心て、ティエリーさん、あなた一体、いつの時代を生きているんですか?

でもまあ、せっかく辿り着いたので、教会の周りをぐるりと一周し、ようやくホントに店のある方面に向かって歩き出す。この時点で時間は夜の8時頃。もう今からレストランに入っていたのでは、ル・シャトーには今日中に帰れなくなってしまう。なのでそれはあきらめる事にして、今にも店を閉めようとしている肉屋兼デリに飛び込み、テイクアウト出来るものを見繕って買う。レンジで温めてもらった食べ物を持って車に戻り、西の海に沈む夕陽を眺めながら三人でベンチに座って食べる。空気が冷えて来ていて、周りは暗くなってきていて、馴染みのル・シャトーから遠く離れた場所で、「私達、お家に戻れるのかしら」と、ヘンゼルとグレーテル的に妙に心細〜い気持ちになっていたところに、温かい惣菜が腹に沁みたー。

で、結局ようやく家路に就いたのは夜の9時近く。ル・シャトーに着いたのは夜の11時半頃でした。その日のうちに帰って来れたけど、これ、ほぼ次の日だよね…。ティエリーの、「やり出したら止まらない」伝説を甘く見ていました。次回はティエリーの傾向と対策を十分練ってからドライブに臨みたい(って、また連れて行ってもらう気満々ってところが、実はあんまり懲りて無い)。


Tuesday 28 October 2014

海老麺@Mandarin Kitchen



ロブスター・ヌードルが評判のマンダリン・キッチン。前から行ってみたいと思っていましたが、ようやくその願いが叶いました…って、大げさ?

このレストランに来て、海老麺を注文するのはお約束として、前菜にはマテ貝を頼みたかったんだけれど今日は無いという事で、おススメを聞いたら海老のナントカ、と言われたので、それとホタテの醤油ソースを三つ頼む。なんだか海老尽くしだけれど、メインも前菜も、我が青春に悔いなし!な美味しさ。

前菜の海老

こんな大きな海老、どこで仕入れるんだろうね、って感心してしまうほど立派で、身がプリプリ、ぎっしり詰まっていました。ソースはぱっと見、濃い味に見えるけれど、食べてみるとそれほどでも無くて、ちょうど良い味加減です。
写真撮るのを忘れたけど、ホタテにかかっていたしょうゆ味のソースも美味しかったです。しょっぱすぎず、ほんのり甘みがあって、出汁の味がよく効いていました。ご飯にかけて食べたい〜っていう味でした。


そしてこれが噂のロブスター・ヌードル。かなり大きなロブスターのブツ切りが一尾分、どんっと乗ってきます。 ロブスター一尾に麺を2人前頼んで三人で分けました。量的にはこれでちょうど良いくらい。こうやって料理が運ばれてから、ウエイターさんが各自のお皿に均等に取り分けてくれるのですが、その前に私達が写真を撮るのを脇にお行儀良く立って待っていてくれます。きっと写真撮る人も多いんだろうな〜。

自分達の料理が来る前は、周りのテーブルを見渡し、あそこは海老三尾、こっちは二尾だ、隣はこの上、ご飯と鍋も頼んでるー、どんだけ食べるのー?とか、ここに来て肉料理頼むなんて邪道だよね、とか、周りの観察に余念の無い私達。その上、一晩でロブスター何尾ぐらい出るんだろうとか、仕入れはどっかから直送か?それとも自分の養殖場を持ってるのか?とか、フランスの地方の魚市場で売ってたロブスターが一尾25ユーロくらいだったから、ここ薄利多売だよね、とかなんかもう、余計なお世話的に経営の成り立ちまで詮索したりして、婦女子は実にかしましい。

しかし海老麺が自分の皿に盛られるやいなや、最初はおいしーおいしー言いながら食べていた三人でしたが、美味しすぎて間も無く三人ともそれぞれ「今、世界には私とロブスター・ヌードルしか存在しない」という境地に行ってしまい、おのおの、黙々とロブスター・ヌードルを食べるのでした。かしまし婦女子を黙らせる威力を持ったロブスター・ヌードル、ひょっとして生物兵器として使えるんじゃないか?

ところで私達が行ったのは、月曜の夜7時の予約でした。着いた時はまだ空いていて、注文を取りに来るのも料理が出て来るのも早くて、ウエイターやウエイトレスさんのサービスも良かったです。が、私達がメインを食べ終わる8時頃には満席の賑わい、席が空くのを待っている人も居るくらいで、働いている人たちみんな、てんやわんやな状態になっていました。このレストランのレビューを読んでみたところ、サービスがイマイチ、というのが幾つかありましたが、あれだけ混んでたら、もーサービスどころやないわーっ、注文こなすだけで精一杯っていう状況になっても無理は無い。ゆったりした気分で食べるなら、少し早めがオススメ。

気になるお値段ですが、ロブスターは時価という事で、でも最初から頼むつもりでいたので、今の時価が幾らか、聞くのをすっかり忘れていました。前菜二つ、ロブスター一尾に麺を二人前、野菜を一皿、デザートにアイスクリームで、一人£30.00くらいでした。

メニューを見ると、他の海鮮料理も充実しているので、是非また行きたい。出来ることなら、ロブスターに飽きるまで通いたいくらいです。

Mandarin Kitchen
14-16 Queensway, London W2 3RX
Tel: 020 7727 9012


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Saturday 25 October 2014

Saint Suliac



ティエリーと行くドライブ旅行、次なる目的地は、フランスの最も美しい村の一つにも数えられるSaint Suliac。ランス河の巨大な入り江の奥の方に位置する愛らしい漁村です。なんでも昔は何の変哲も無い普通の漁村だったのを、誰かが村興しをして観光客を呼ぼう!と一念発起し、村全体を愛らしくデザインし直し、それが大成功した、という話。これはティエリー氏の受け売り。

小さな村なので、駐車スペースが中々見つからず、村から少し離れた駐車場に停めました。上の写真は歩いて村に向かう途中に撮ったもの。古い教会の尖塔の形が愛らしいなぁ。この教会、一番古い部分は12世紀の建造とか。この村の呼び物の一つです。なので早速行ってみる。


教会の門。車が邪魔だなぁ…。

教会に着いたのはちょうど5時くらいで、教会当番のおばさんが、今まさに教会を閉めようとしていたところでしたが、私達が中を観終わるまで開けていてくれました。この辺が田舎の良いところ。

教会入り口の天井部にあった古い絵。良い味出してます。


これまた古そうな聖母子像。マリア様の素朴な顔がイイ!

悪魔を退治する大天使ミカエル。モン・サン・ミッシェルの聖堂のてっぺんに乗っかってる大天使ミカエルもそうだけど、フランスのミカエルって、イギリスのミカエルに比べて腰つきがナヨナヨと色っぽい。アムールの国、フランスのなせる技?

やたらと古そうな石造りの何か。
聖水を溜めておくためのものかな?



教会を出て、次はだらだらと坂を下って水辺に向かいました。あまり長くは居なかったので、水辺がどうだったかっていう印象は殆んど無いんですが、唯一強烈にインパクトがあったのが、上の猫君。写真では伝わりませんが、巨大だったのです。中型犬くらいの大きさで、おっとりしていて、めちゃくちゃ可愛いかった。鼻筋が長くて気品に溢れるお顔。あとで調べたところ、この子は多分メインクーン。私は長毛種の猫にはあまり惹かれませんが、この子なら欲しい〜。

…って、フランス旅行とは全く関係ありませんね。水辺を後にして、ゆっくりと自動車の停めてある駐車場に向かって歩くことにします。


途中にあった、海系のアンティーク屋を冷やかしたりしながら…。





駐車場までの帰り道、かなり可愛い家々の並ぶ通りを通ったんですが、写真撮れなかった〜。なぜと言うに、小腹の空いた私達、チョコアイスを買って道すがら食べながら歩いていたからです。残念〜。 サン・スリアックを出たのが、多分5時半を過ぎていたかと思うのですが、ティエリー氏、まだまだ引き返す様子は見当たらず。「僕は最後に海が見たい。夏だもの。」と、乙女のような事を言うので、私たちもそれに従うことに。ちなみにサン・スリアックの水辺は入り江なので、海とは認めないティエリー氏なのであった。…というわけで、ティエリー氏と行くダイ・ハードなドライブ旅行、もう一回続きます。



オマケ。写したつもりはないのに写っていた、一度見たら忘れられないティエリー氏の後ろ頭。 これで夜道も安心です。


Thursday 16 October 2014

大ちゃんのお友達


ステキなボク…。

この角度もステキな罪なボク…。

先日、ブログを通じて知り合った、希望職種:家猫inロンドンのyarnmaruさんが、大ちゃんに会いに来てくれました。yarnmaru さんのページに、訪問時の大ちゃん写真が何枚か載っていますが…大ちゃん、かわええ〜〜〜っ。超かわええ〜〜‼︎ 親バカ丸出し、フル・スロットルで爆走〜〜〜。「ナンにゃナンにゃ?この人は誰にゃ?」っていう、ちょっと疑りの眼差しの入ったクリクリお目々が超可愛いー。他の人の視点で捉えた自分の猫って、おもしろ〜い。


Yarnmaruさんは、健康そうにすくすく育ったキャットニップを、大ちゃんへのお土産に持ってきてくれました。 種から育てたんだそうです。どうです、この緑の美しさ。Yarnmaruさんは、グリーン・フィンガー*の持ち主ですね(*グリーン・フィンガー:植物を育てるのが上手い人)。既に育って伸びた茎を、根元で潔ぎよくパチっと剪定してある様子がプロっぽくてカッコイイ。あー、あるある、こういう切り方、Kew Gardens とかで見た事あるー、みたいな。そして切った脇から生えて来ている、小さいキャットニップが愛らしい〜。
ちなみに、大ちゃんのオモチャにと、小さな栗とキノコの編みぐるみも頂いたのですが、そちらはわたくしが徴収致しました。

立ち姿が美しい。

ではこのキャットニップを、大ちゃんに提示してみましょう。

すんすん。

すんすんすんすん。

ツーン。

ちょっと良い気分になってきました。
 
よっ。元気か?

君、無口だね。

母さん、この子、喋らないですよ。

飽きた。

ついでにこちら、キャットニップの匂いにツーンとなる大ちゃんの動画です。執拗に大ちゃんの鼻を追いかける飼い主の指が、実に怪しい。猫ハラスメントと言われても弁解できません…。



オマケ動画。クッションを爪研ぎに使う大ちゃん。




Yarnmaru さん、ご訪問&沢山お土産をありがとう! また大ちゃんに会いに来て下さい。大ちゃん共々、お待ちしています。

Château de la Rouërie

 

 

ティエリーに連れられて行ったノルマンディ/ブリタニー旅行記の続きです。次なる目的地は、シャトー・ドゥ・ラ・ルエリ(Château de la Rouërie)。まだ一般向けにオープンしたばかりの、超マイナーなシャトー。なんでもティエリー氏、20年だか30年だか昔に、この館のおばあさまからランチの招待を受けて訪ねて行った事があるのだそうだ。私達をドライブに連れて行くというのでこの辺りのシャトーを調べていたら、昔に尋ねたこのお屋敷が、最近一般公開されるようになったのを知り、懐かしくって是非とも行きたくなったらしい。

 

 

このお屋敷の持ち主は、若いイケメン・フランス人男子の仲良し兄弟。感心な事に、二人とも流暢に英語を話す。それでこそ現代の若者!こうした屋敷は維持が大変なので、お金儲けの為では無く、屋敷を維持する資金を工面するために一般公開を決心したのだそう。

 

(左がシャトーの主人、右はティエリー氏…まあ、まさかこの二人を仲良し兄弟と間違える人はいないと思いますが、念のため。)

シャトー入り口のチケット売り場でシャトーの開場を待っていると、そこに現れた屋敷の持ち主。おしゃべりなティエリー氏は早速彼に自己紹介をし、「あたくし、昔にここに来たことあるんざーますのよ」(多分、ティエリーはおネエ言葉を話すような気がするので…。)

 

 

などと、お坊ちゃんとおしゃべりを始める。で、ティエリーの人当たりの良さが幸いし、屋敷の主人みずから案内して貰えることになる。

 


男子に似合わぬ乙女チック・コーナー

 

 

お屋敷の中はホール、図書室、ラウンジの三部屋を公開。お坊ちゃんはこのお屋敷の歴史や家系を熱意を込めて説明してくれたのですが、あんまり頭に残っていない…。覚えているのは、ルエリ侯爵(Marquis de la Rouërie) (左) という、喧嘩っ早くて尻に火の点いたような侯爵がいて、なんだかんだといつも戦に参加していて、果てはアメリカの独立戦争の応援に馳せ参じた…っていう事くらい。なのでこの侯爵、アメリカの一部ローカル区域ではよく知られている人らしいです。で、屋敷の主のお坊ちゃんは、そうしたアメリカからの歴史好きな観光客が来てくれないかな〜、と期待しているらしい。残念ながら、乙女心をくすぐるようなロマンチック系のシャトーではないのだった。アメリカから、沢山お客さんが来てくれると良いねぇ。

 

階段の窓に置いてある美人像。左右の伸び放題の折り鶴ランが良い雰囲気。こんな風にぼうぼうに伸ばしてもステキなのですね。…でもうちでは無理。なぜなら折り鶴ランは、大ちゃんが食べてしまうから育たない…。

 

屋敷の敷地は広くて、大きな納屋もある。納屋を改装して結婚式の披露宴会場として使えるようにしたいという事で、現在シャンデリアのみゴージャスな状況。

 

 

屋敷の裏に植えられた木。確かルエリ侯爵が持ってきて植林した、とか言っていたような気がするけれど定かではない。

 

このシャトー、家族連れを呼び込むアトラクションとして、隣接した敷地をアニマル・パークにする事を計画中。写真に撮って来なかったんだけど、現在のところ、世界各国の羊が集められています。…しかし羊コレクションて…珍しい趣味ですね…。農場は弟の担当でした。わざわざイギリスからシープドッグも連れてきていて、弟君は羊の囲い込みのデモンストレーションをしようとしてくれるんだけど…そして犬君の方も、働く気満々なんだけど…。羊飼い役の弟くんも、 わざわざイギリスからやって来た犬君も、なんだかどこか抜けているのだった。羊、全然柵に入らな〜い。どころか逃げ放題。脱力感満々なコンビなのでした。そういう趣旨じゃぁ無いんだろうけど、結構笑わせてもらいました。

 


写真に撮らなかったので、絵日記をアップ。

 

 

ノルマンディドライブ旅行は、まだまだ続きます。

 


 

Monday 13 October 2014

Manon@Royal Opera House


CHOREOGRAPHY
Kenneth Macmillan
CAST
Manon: Sarah Lamb
Des Grieux: Vadim Muntagirov
Lescaut: Valentino Zucchetti
Monsieur G M: Gary Avis

5日の日曜日にロイヤル・オペラ・ハウスでマノンを見て来ました。元々マノンに配役されていたローレン・カスバートソンが怪我の為、サラ・ラムに配役が変更になっていましたが、私のお目当ては、デ・グリュー役のヴァディム・ムンタギロフだったので、マノン役はどっちでもいいの。

美しく魅力的な若い女性、マノンを巡って繰り広げられるこのバレエはケネス・マクミランの名作。マノンがデ・グリューの腕の中に飛び込んで行ったり、デ・グリューがマノンを宙に放り投げ、マノンは空中でコークスクリューのように二回転して再びデ・グリューの腕に抱きとめられたり、といった、アクロバット的な難しい振り付けがふんだんに盛り込まれています。その割には体操っぽくは無く、流れるように美しい…とはいえ、この辺、パートナーを組むダンサーの息が合っているかどうかにかなり左右されますが…。

お目当てのヴァディムくん、ソロは不安定なところもあったけど、も〜、とにかくアラベスクのスッと伸びる線がエレガントで美しい〜! まだ若い上に童顔なので、純情で頼り無さげな文学青年、実はイイとこのお坊ちゃんという感じのデ・グリューでした。でも最後にマノンを亡くして号泣するシーンは、私ももらい泣きしそうになっちゃいましたよ。

サラ・ラムのマノン、真の恋人、デ・グリューと恋に落ちるシーンよりも、お金持ちのムッシュG.Mに言い寄られて小悪魔的に振る舞う場面の方が説得力ありました。デ・グリューとのシーンは割にあっさりとした感じだったので、メロドラマな音楽に合わせて、もっとねっとり踊ってくれてもいいなー、なんて。

ラスコー役のヴァレンチノくん、妹を金で売る兄っていう一癖ありそうな胡散臭さが良く出てました。でも酔っ払って踊るシーンは、ちょっと千鳥足具合が足りないなぁ、という感じで、私としてはリカルド・セルベラのバージョンが一番好きかな。

三幕の、マノンが売春の罪でアメリカのルイジアナに島流しになり(そういう時代があったんだねぇ)、疲れ果ててデ・グリューの腕の中で死ぬシーン直前のパ・ドゥ・ドゥーは、シルヴィ・ギエムを超える人は居ないなぁ、と思います。まぁ、ギエムと比べちゃいかんよね、とは思いつつ、どうしても彼女を基準にしてしまう。それでも。彼女に至らないまでも、誰が踊ってもこのパ・ドゥ・ドゥーは美しいです。一重に振り付けの素晴らしさに依るものですねー。マクミラン、天才!

Friday 3 October 2014

Chateau de la Ballue



ノルマンディー旅行記の続きです。これ以前の旅行記はこちら

フランソワーズに続き、今度はペーターおぢの別の友人、ティエリーが日帰りでドライブに連れて行ってくれました。ティエリー、人を案内するのが大好きみたいで、そして一つの事をやり出すと止まらなくなるタイプの模様。それで一旦ドライブに繰り出すと、一緒に行った人は夜中まで帰れなくなる…という伝説があり、おぢを含め、彼の友人たちは今や誰も彼の日帰りドライブに付き合ってくれなくなっているらしい。とはいえ、車の無い私達には、どっか連れて行ってもらえるというのはありがたい話。というわけで朝10時にしゅっぱ〜つ。


まずはChateau de la Ballue という庭園自慢なシャトーへ。ティエリー、ご当地のマイナーなシャトー巡りがお得意の模様。このシャトーは、フランソワーズの友人が買ってしばらく所有していたそうな。それで庭を手入れして一般公開しています。




美しく手入れされたお庭が続くんですが、これだけの広さの庭を常に完璧な状態に保つのは大変。この日も庭師が三人で剪定していました。それでも散髪の必要な庭木が そこらじゅうに見られる。モグラ叩き状態ですよ。私には無理。私が持ち主だったら、あっという間にワイルド・ガーデン化するでしょう。



「ゴドーを待ちながら」を思わせる、何やらシュールな空間

この愛らしい彫像は、この庭園ではレア物。実は庭の至るところに、目も当てられない程醜い、コンテンポラリー・アートの彫刻が散りばめられていました。写真では全てカットです。でも話のタネに、一枚くらい撮っておいたらよかったかも…。とにかく、全てゴミ箱に捨てたくなる様な 悲惨な作品群でした。



ところでこのシャトー、田舎には珍しく、素敵なカフェがあるのです。朝のコーヒーをまだ飲んでいなかった私、早く次のシャトーに行きたいティエリーを無理やり引き止め、ここでコーヒー一杯飲ませて貰いました。美味しいコーヒーでした。当たり前よね、ノルマンディーの田舎とはいえ、フランスだもの。結論: ここでコーヒー飲んでおいて、ほんっとーに良かった。この後は、コーヒー飲む暇なんて一切無い、スパルタな一日になったのでした。