Monday 29 February 2016

シェル・ゴールド@装飾写本ワークショップ



装飾写本ワークショップ2日目の続きです。この日はほんと盛り沢山で、シェル・ゴールドの作り方のデモンストレーションもありました。シェル・ゴールドというのは、金箔をまるで水彩絵の具のように筆で塗れるように加工したもの。金箔を使うと、どうしても使い切れなかった半端部分が出てくるので、その再利用にもなります。他の絵の具と同様、伝統的に上の写真のように貝殻に納めて保存されたので、シェル・ゴールドと呼ばれます。尚、上の写真はロンドン、V&A博物館より拝借しています。



シェル・ゴールドを作るプロセスは比較的単純で、まず指先に一滴ガム・アラビックをとり、それで金箔を触ると金箔がくっつくので、そのまま上の写真のような陶器の容器に移し取って、指で満遍なく練るという工程を繰り返します。一度にたくさん金箔を容器に加えないで、少量ずつ練りながら増やしていくそうです。…まぁ、見かけ単純だけど、実際にやってみると案外コツがあって難しいのかも。

この日は時間の都合でここまでしかデモンストレーションがありませんでしたが、十分金箔を練ったら、そのあとにガム・アラビックを水で洗い流すという工程が必要になります。やり方は、ガム・アラビックと混ざってペースト状になった金粉の入った容器に精製水を注ぎ、金粉が沈殿するのを待って上澄みを捨て、再び精製水を加え沈殿を待ち、という工程を数回くりかえすのだそうです。ちなみにガム・アラビックは、蜂蜜で代用もできるそうです。ガムを洗い流したら、金を貝殻に移して乾燥させます。絵の具として使う時は、ゼラチン・カプセルを水に溶かしたものをメディウムとして使います。ゼラチン・カプセルにも色々とグレードがあるそうで、料理に使うゼラチンでは、ダメ絶対、だそうです。


3回目のワークショップで、実際にシェル・ゴールドを使いましたが、この時は市販のものを使いました。市販のものは、上のようにプラスチックの容器に入って専門店で売られています。15mm x 7mm x 2.5mm くらいの、ちーこいちーこいタブレット状のシェル・ゴールド、で£25くらい。先生は、市販のものは粒子が粗いと文句を言っていました。自分で作ると、もっとずっと滑らかなシェル・ゴールドが作れるそうです。






シェル・ゴールドを使って描いたのは、装飾写本の縁取りに使われる植物のモチーフの一部分。シェル・ゴールドを2度塗りしたあたりかな。製作途中の写真です。このモチーフは、水彩用紙ではなく、牛皮紙(Vellum)に描いています。牛皮紙にも色々な厚さがあるそうですが、今回使ったものは、カードのようにしっかりした厚さのものでした。こうした装飾写本用としては、ケルムスコット・ヴェラム(Kelmscott Vellum) が最高級品らしいです。
イギリスで羊皮紙、牛皮紙の老舗は、 William Cowley というお店。YouTubeとか検索すると、牛皮紙を作る工程とか出て来て大変興味深い。さすがに自分で作ってみたい、とまでは思わないけど。

ちなみにシェル・ゴールドや金箔をネットで買えるお店はここ。Gold Leaf Supplies
ロンドンの老舗は、Cornelissen 。でもここはかなりお高い。

 

Friday 26 February 2016

覗いているのは誰?





ガスと電気メーターの定期検査の人が来ていて、ワードローブの中からコッソリ様子を見る大ちゃん。



ついでにもう一枚。巣材に埋まってゴキゲンな大ちゃん。ヘン顔だけど、これでも笑ってるんです。


Saturday 20 February 2016

絵の具作り@装飾写本ワークショップ


ピグメント(色素)の仕舞ってある棚


先週から始まった装飾写本のワークショップ、今日で2日目。全部で3日しか無いけど習うことはてんこ盛り。先生、「さぁ、今度はコレやります。」と、次から次へと新しいテクニックを教えてくれる。情報量がとんでもなく多くて、私の脳みそ、次世代プロセッサーへのアップグレードの必要を感じましたよ。

今日は、ガム・アンモニアックとジェッソの上に金箔を貼り、シェル・ゴールドの作り方(金箔を水彩絵の具のように筆で塗れるように加工する方法)を途中までやり、ピグメントから水彩絵の具を作る方法を習い、最後は金箔貼りの終わった絵に途中まで絵の具を塗って終わり。一回のブログエントリーでは記録しきれないので、何回かに分けることにします。まずは絵の具の作り方。



絵の具の材料:ピグメント、液体に加工済みのガム・アラビック、アカシアの蜂蜜(保存中に結晶しないのでこの蜂蜜を使う)。ピグメントはアヴァナ・オーカーというのが使われました。…黄土の一種だけど、聞いたことの無い色素だなー。



まず色素を花崗岩の板に取り


ガム・アラビックを数滴加えてパレットナイフで練ります。ガム・アラビックは最小限に抑えるため、少しだけ加えてはナイフで練るというプロセスを何度か繰り返します。



ピグメントの粒子がすべて満遍なくガム・アラビックでコーティングされ、滑らかになった状態。なんだかヘーゼルナッツ・ペーストみたいで美味しそうだな。この状態になったら、今度はスポイトで精製水を少しずつ加えながら、ガラスで出来たミュラー(Muller) と呼ばれるモノで練ります。ちなみに加えるガム・アラビックの量は、ピグメントによって違うそうで、ラピスラズリなどはほんの少量で済むそうな。




ミュラーで練っているうちに、だんだんツヤツヤしてくる。 この過程で、ピグメントの粒子がさらに細かくなります。群青のラピスラズリや緑青の孔雀石は、粒子が細かくなるにつれ、出来上がりの絵の具の色が薄くなっていくので注意、との事。アヴァナ・オーカーは、粒子が細かくなっても色に変化はないので大丈夫。



十分滑らかになったら、最後に蜂蜜を加えてミュラーで満遍なく混ぜ込む。蜂蜜は、割り箸の先に取って、10滴程度。蜂蜜は保湿剤として加えます。足らないと貝殻に移して乾いた時にヒビが入り、入れすぎると完全に乾かず、いつも表面がベタつく感じになります。多いよりは足らない気味の方が良いとのこと。





出来上がった絵の具をパレットナイフで集めて貝殻に詰めて出来上がり。



絵の具は人数分の貝殻に 振り分けられました。来週使うそうです。ワークショップが終わったら、お土産にお持ち帰りできるそうです。うれしー。

ちなみにピグメントを練る板は、通常はガラスです。チーズを乗せるのに使われる、大理石の板で代用できるか聞いたら、大理石は柔らかすぎるので不可、との事でした。

 

Monday 15 February 2016

装飾写本ワークショップ 第1日目



土曜日に、装飾写本(Illuminated Manuscript) ワークショップ実践第1日目に出てきました。実はこれ、水曜日に第1日目は始まっていましたが、その日は実践は無し。研修でウインザー城に行き、門外不出のソビエスキ時祷書(Sobieski Book of Hours)を実際に見せて貰いました。どのページにも見事に装飾の施された実物を間近に見ることが出来て、興奮のあまり眩暈がしそうでしたよ。

ちなみに装飾写本というのは、主に宗教的なストーリーラインが書かれた羊皮紙や牛皮紙(ParchmentとかVellumと呼ばれる) のページの縁取りに植物や動物モチーフの装飾が施され、ところどころに小さなイラスト、ここぞという見せ場は1ページを割いたイラストが描かれている写本です。イルミネーションと呼ばれるイラストには金箔がふんだんに用いられていて、まさに光り輝く写本という名に相応しい美しさです。



…という事で、実践第1日目。ここからは自分への覚え書き。このワークショップでは、三日間で二枚のイルミネーションを完成させる予定で、まず最初の1枚目は300gsmの水彩用紙に描きます。約10センチ 四方の水彩用紙を渡され、それをマスキング・テープで薄いボードに固定。その後、元絵(このページ一番上の写真)を水彩用紙(本紙)に移すためのトランスファー・ペーパーを作ります。


赤いピグメントをコットンに取って、画用紙の面に満遍なく刷り込んでいきます。ピグメントの名前、忘れたー。次回聞かなくっちゃ。



トランスファー・ペーパーが出来たら、本紙の上に元絵を置いて片方をマスキング・テープで固定し、元絵と本紙の間に、トランスファー・ペーパーをピグメントの面が下向きになるようにして挟み込み、元絵のもう片方の端もマスキング・テープで固定。


絵が動かないようにしっかり固定してから、元絵を5H以上の硬い芯の鉛筆で筆圧をかけてなぞっていきます。鉛筆の芯が柔らかいと、線が本紙にハッキリ写らない。また、筆圧をかけることで本紙に溝が出来るので、あとでギルディング(金貼り)用のジェッソ(下塗り兼 糊)等を塗る時の助けになります。


時々そ〜っとマスキング・テープを剥がしてトランスファー・ペーパーを持ち上げ、線がきちんと出ているか、トレースし忘れた部分はないか、確認しながら作業を進める。全ての線を写し終わったら、次に本紙に写った赤いラインをインクでなぞって固定していく。この際使ったインクは、オークの木に出来るOak gallと呼ばれるこぶに含まれる、タンニン酸と硫酸鉄を反応させて作った、先生のお手製のインク。中世、実際に使われたインクの製法にのっとったもの。



生徒によって進み具合はそれぞれなので、インクでなぞるのは、キリストの頭を優先的にやるように言われる。で、インクで全部線を固定し終わっていない人も、スケジュールの関係で次の工程入る。すなわち、キリストの頭の回りは金箔が貼られる予定なので、そこに下地となるジェッソを塗るという作業。




金箔を貼るための下地となるマニュスクリプト・ジェッソは、通常の油彩画などのジェッソとは異なり、これまた独特の材料で作られている。これも先生の手作り。薄い円板状に伸ばして乾燥させてあるジェッソを割り、小さな容器に入れてほんの少し精製水を加え、水を吸うのを待つ。 以下、ジェッソの材料。割合はまだ調べていない。

消和済み石膏(Slaked plaster)、鉛白(Lead carbonate/White lead)、魚の膠(Fish glue/Seccotine)、粉末にした氷砂糖(蜂蜜でもよかったハズ)、アルメニア・レッド・ボール(赤い色素。Armenian bole)、精製水。石膏により金箔が少し盛り上がった感じのテクスチャーになる。鉛白は石膏の分子の隙間を埋め、しっかりさせる。魚の膠を使うのは、室温で液体なため。砂糖は水分を吸い寄せるので、ジェッソを塗って乾燥させたあとに、息を吹きかけることでジェッソがやや湿り気を帯び、そこに金箔が貼りつく。砂糖は粉砂糖ではなく、氷砂糖を粉末にして使うのが水分吸収には重要らしい。アルメニア・ボールをほんの少量加える事でどこにジェッソを塗ったか分かる。赤い色なので、金の発色も助ける、と思う。



水を吸い切ったジェッソを、割り箸を使ってトントンとならして完全に溶かし、ダマが残らず均一になるように、また気泡が入らないようにゆっくりと混ぜる。このジェッソが一人一人に配られ、それをほんの少し絵の具皿に取って、気泡がある場合は丁寧に潰しておく。潰し方:針の先に丁子油(Clove Oil)をチョンっとほんの、ほんの少〜しだけ付け、その針の先で気泡を触ると、ぷんっと気泡が潰れる。オイルがジェッソに混ざるのはよろしくないので、オイルの量は極力少な目に。



まず最初に少し薄めたジェッソで光輪の縁の部分を線描きして、ジェッソを塗る境界をハッキリさせておく。絵のトランスファー時に筆圧をかけておくと、本紙に溝が出来ているはずなので、境界線に自然にジェッソがはまっていく感じになるハズ。私は鉛筆があまり硬くなかったので、かなり筆圧をかけたけれど、溝が出来ていなかった。 光輪とキリストの頭の線をなぞったら、次に実際に光輪を濃いジェッソで埋めていく。



私のワーク。光輪の部分にジェッソを塗ったところ。このジェッソをどのくらいの濃さで塗るかというのが難しくて、私は最初薄すぎたために乾くのを待って二度塗りしました。でも二度目に塗った時は濃すぎて盛り上がりすぎ、乾いたらほんの心持ちジェッソが縮んで、光輪の真ん中に薄いラインが付いている。



ところでインクで 絵を固定する時、左の元絵を見ながら描いていたのですが、どうしてもオリジナル・ジーザスの垂れまぶたの情けない顔が気に入らず、ちょっとだけまぶたをいじってみたら…なんかえらくイケメンになってしまった。それも妙に東洋風。キリストというよりは、若きブッダという感じ。



どうよこのイケメンぶり。ちょっといじっただけなのに、どうしてここまで顔が変わるかな。ひょっとしてジーザス先生、こういう風にカッコよく描いて欲しかった?なんか自分でめっちゃウケてしまって、見るたびに笑えてしまいます。ちなみにキリストの周りを取り囲んでいるのは、炎のセラフ達。

光輪部分にジェッソを塗ったら、次に周りの四角いフレーム部分にガム・アンモニアック(Gum Ammoniac) を塗ります。これも金箔の下地ですが、下地によって上に乗せる金箔の光り方が変わるということで、ジェッソだとツヤツヤな光に、ガム・アンモニアックの場合はマットな光になるそうです。作品の主題は真ん中のキリストなので、フレームに余計な注意行かないように、一段落とした光加減にするのだとか。にゃるほどぉお。このフレームも、やはりまず外の線と内の線をガム・アンモニアックで描いて境界を作っておいてから、内側を埋めるという方法を取ります。




ガム・アンモニアックを一層塗ったところでこの日は時間切れ。自分でガム・アンモニアックを買ってきて、あと二層塗っておくように、それからペン入れが終わってない人は、終わらせておくように、という宿題が出ました。マニュスクリプトはデリケートなものなので、箱に入れて持ち運ぶとヨロシイ、ということなので、この作品に合わせて箱、作りましたよ。



箱入りマニュスクリプト。

ということで続きは次回

 

Saturday 6 February 2016

テムズ川散歩と万歩計



最近、携帯電話に万歩計が付いていることを発見した私。これ(iPhone 6)に買い替えた時から、勝手に歩数が記録されていたという…。家を出ない日なんかは、100歩も歩いてない。なので、この万歩計の歩数を伸ばすべく、最近は家の中でも携帯を持ち歩き、スクワットしたりバレエの練習をしてみたり、用も無いのに階段を昇り降りしてみたり(万歩計には、その日に登った階数も出るのです)。意外なところで健康維持に貢献するiPhoneなのであった。で、今日は曇天だったけれども、一気に歩数を伸ばすゼ!と、外に散歩に行きました。

散歩というと、いつもは大抵チズウィック・ガーデンズに行くけれど、現在のチズウィック・ガーデンズ、チャイニーズ・ランタン・フェスティバルの、原色が目に痛いディスプレイがそこら中にあるかと思うと、せっかく行っても気持ちが休まりそうにないので、今日は趣向を変えてテムズ川沿いに出てみました。



カラー写真なのに白黒に見えてしまうという、典型的なロンドンの色彩。



散歩したのは、テムズ川沿いの遊歩道、ストランド・オン・ザ・グリーン。テムズ川は海の潮に影響を受ける干満のある川なので、大潮の時など、この遊歩道は水の下に沈んでしまう。川沿いには素敵な古い家々が並んでいるけれど、テムズ川が氾濫した場合には洪水に直撃されるので、大抵の家にはこの写真のようにフラッド・バリアと呼ばれる浸水防止の工夫が施されている。



家の庭への扉が、密閉タンクの蓋ような フラッド・ゲート付きの家もあります。



パブの窓。下の方に白い板が二枚はめてあるのは、これもやはり浸水防止策。



こんな可愛いテーブルと椅子を出してある家も。…でも歩行者が勝手に座っちゃうんでしょうか。椅子の前にはなんか痛そうなチェーンが …。

今年の冬はずっと暖かくて、今日も気温は10度を越していたと思うけど、向かい風だったせいか、ずっと歩いていたらさすがに耳がちぎれるように痛くなってきた。…あー、寒い寒い、耳が痛い、もうダメ〜、となったあたりで遊歩道は終わり、そのすぐ先にあったカフェに入りました。



コーヒーだけのつもりだったのに、ついでに軽く食べちゃったよ。せっかく歩いた分のカロリー消費がチャラ。で、ここで万歩計をチェック。家からの歩数は1985歩でした。うーん、結構遠くまで歩いたつもりでいたのに、案外伸びないものなのね。自分的にはこの倍くらいは歩いたような感覚だったんだけどなー。で結局、 今日一日歩いた合計は4777歩でした。あ、もう夜中過ぎちゃってるから、きのうになるけど。

ちなみにバレエのクラスに出るために、ロンドン市中に行って帰って来ると、そういう日は意識しないでも大抵5000歩位は歩いています。何気なーく街歩きしてる時って、知らずに結構な歩数を歩いているんですねえ。

 

Thursday 4 February 2016

仕舞い忘れ

 

 

大ちゃん、大ちゃん、舌をしまい忘れてますよー。

 

 

 

舌、舌ー。

 

 

そんなエラそうな顔したって、舌出しっぱなしじゃ格好がつきませんよ。

 

 

 

…ちなみに背景の白い紙は、大ちゃんによってもて遊ばれたティシュー・ペーパーです。 クシャクシャなので一度処分したら、大ちゃんがものすごーく残念そうな顔をするので、以来出しっ放し。