Thursday 19 May 2016

Frankenstein by Liam Scarlett@Royal Opera House


どくろ、キレイ…。
 
 
うっかりブログがあるのを忘れるくらい更新の間が空いてしまいましたが、きのうロイヤル・オペラ・ハウスに、リアム・スカーレットの新作、フランケンシュタインを観に行ってきました。
 

 
配役
 
ヴィクター:フェデリコ・ボネリ
エリザベス:ラウラ・モレラ
怪物:スティーブン・マックレー
 

 
今まで「ヘンゼルとグレーテル」とか「切り裂きジャック」などを題材にした小品を振付けてきたスカーレット。人間の心の奥に潜む闇とか、暗くてドロドロした人間心理をバレエで表現っていうのが超絶上手い若手振付家。そして堂々、幕間も入れて三時間に及ぶ全幕モノの大作の振り付けに選んだのが「フランケンシュタイン」…そそ、そー来たか。バレエの主人公に怪物を選ぶって、目の付け所が違う。プログラムを見たとき、一幕50分、二幕45分、三幕30分とあって、「な、なげーよ。」って、中だるみするんじゃないかと思いましたが、そんなことはぜんっぜん無くて、ステージから片時も目が離せない、どきどきしっ放しの三時間でした。エグくてグロくて、美しくて哀しい物語だった。
 
 
ヴィクター・フランケンシュタインは、良家のおぼっちゃん。幼い時に行き倒れかかっていた孤児エリザベスを両親が引き取り、一緒に育って今は恋仲。父に倣って医者になるため、ジュネーブの実家を離れてインゴルシュタットの大学に入学する。
 
 
幼馴染のヴィクターとエリザベスが恋心を育みながら大人になる様子の演出が、簡潔ですごく上手い。
 
ステージセットも秀逸。大学の解剖講義室なんてキャビネット・オブ・キュリオシティそのものだし、電気ショックを与える機械はスチームパンクのシャンデリアみたいでキレイ。いちいちツボをついてくる。
 
 

 
 
母を亡くして以来、生と死の神秘にとり付かれ、実験に没頭するヴィクター。そして出来てしまったのがこれ。
 
 

 
 
できあがったイキモノのあまりの醜怪さにパニックするヴィクター。ヴィクターの反応にびっくりした怪物、とっさにヴィクターのコートを手に取り、逃げてしまう。
 
(…ていうかー。身体の部分を切ったり縫ったりしてる時点で、醜いってわかんないかー、ふつうー。)
 
大変なモノを作ってしまったという絶望のどん底に落ちていったヴィクター、親友のヘンリーに付き添われて実家に帰る。そして怪物は、産みの親であるヴィクターを慕ってこっそり後をついていく。
 
大学から戻って来て以来、罪悪感のあまり何があったのかエリザベスに打ち明ける事もできず、自分の殻の内側に引きこもってしまっているヴィクター。変わってしまったヴィクターを、何とか殻の外に出そうとするエリザベス。二人それぞれの気持ちを内に秘めながらのパ・ドゥ・ドゥーが美しかった。
 
そしてこっそりと屋敷の影に潜む怪物。自分をこの世に現した父であるヴィクターからの愛情を求めて付いてきたのに、自分は疎まれていると知り、ヴィクターとその家族への復習を誓う。
 
 
髑髏がだんだんこっち向くんだよこえーよ。
 

 
三幕目。ちらちらと、ヴィクターにつきまとう悪夢のような怪物の登場のさせ方が、忍び寄る不幸を暗示するようでぐっと来ました。・・・そしてヴィクターの幼い弟も、ヴィクターの父もエリザベスも、どんどん怪物の手にかかって死んでいく。ヴィクターは最後に自らの命を絶ち、怪物は屋敷に上がった火の手の炎に包まれて死んでいく。
 
なんちゅうか、救いがありませんね。生命は、まっとうな手続きを踏んでつくりましょーね、ってことかしら。でもね、怪物、かわいそうだったんですよ。同情しちゃう。ヴィクターよ、「愛されないなら憎む」っていう原始的な感情しか無いとは言え、感情と学習能力のあるモノが作れちゃったっていうだけで大したものだと思うけど?。それに自分で作ったものだし、醜くっても可愛い、とか思わないのかな。このへん、男と女の差なのかしら。
 
それはさておき、このキャスト、すごく良かったです。ボネリは良家の苦悩するぼっちゃんの気高さがよく出ていたし、ラウラ・モレラは情感たっぷりだし。そして私、スティーブン・マックレー好きすぎる。醜いメークを施しているけど動きが美しいので、普通に王子様してる時より、不思議と余計美しさが際立つんですよ。最後の怪物とエリザベスのパ・ドゥ・ドゥー、もー、めちゃくちゃキレイだった。どきどき。そしてその後の怪物とヴィクターが組んず解れつするシーンでは、ああ、怪物ってヴィクターの闇の部分なのかもなぁ、と思わせる。怪物だから、ギクシャクした怪しい動きを期待してたのだけどそういう事は無くて、普通にバレエの動きだった。怪物っぽさではなくて、その内面の純粋さを現したいから、敢えてヘンな動きは入れなかったのかな。
 
これがベスト・キャストかな、と思うけど、他のキャストでも観てみたいなぁ。

こちら、リハーサル風景。


 
 
 

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